自己・組織変革のバイブル『なぜ人と組織は変われないのか』著者最新刊!
ほとんどのビジネスパーソンが取り組む、無駄を生む「もう一つの仕事」とは――
著者:ロバートキーガン、リサ・ラスコウ・イヒー
翻訳:中土井僚
部門間の壁やタコツボ化という症状は、組織規模が大きくなればなるほど、避けがたい問題として立ち現われてきます。
上位階層のマネジメントポジションになればなるほど、下位階層が相互に協力しあってシナジー効果を出そうとしないことに苛立ちを感じ、「なぜ、1+1を2以上にしようという単純なことがわからないのだろうか?」と首を傾げたくなります。
実際にそうした状況を打破するために、部門間をまたがるプロジェクトや合宿などを開催するケースも多々見られますが、思ったような効果を得られずに終わることも少なくありません。
そうした目先のことしか見えておらず、視座が低いとしか思えないような部分最適的な活動は、日々の行動の優先順位付けのパターンに起因しています。
いずれの階層においても、それぞれが役割として課された成果目標を持っています。社長であれば、会社全体の売上と利益、事業部門においては事業部の売上と利益、部門においてはその部門がミッションとして課されている業務目標の達成や業務遂行、チームにおいてはチーム目標の達成と業務遂行、そして個人としては個人目標の達成と業務遂行といった形で細分化されていきます。
それぞれの階層は業務の優先順位を決める上で、自分の成果目標に直結する活動とそうでない活動のどちらの優先度が高いのかを日々判断しています。
日々の優先順位の判断の中で、自分の成果目標に直結する活動である「部分最適活動」と直結しない「全体最適活動」のどちらを優先するのかの優先順位対決の結果、「全体最適活動」がほぼ全敗してしまうために、部門間の壁やタコツボ化が加速してしまうことになります。
「1+1を2以上にしてほしい」という要求は、その階層の成果目標を担う長にとっては成果目標に直結する優先度の高い活動となりますが、その下の階層にとっては自分の成果目標に直結しない優先度の低い活動となります。
この「優先順位付けにおける階層構造の罠」が組織を硬直化させる要因の一つとなっています。
「優先順位付けにおける階層構造の罠」を超えていけるかどうかは、以下の4つの条件を継続的に満たせるように組織運営できるかにかかっています。
成果目標に直結しない「全体最適活動」をトップダウンによって実行させようとしても、やらされ感による「やっつけ姿勢」が生じるだけになり、真のシナジー効果は見込めなくなります。
シナジー効果を生み出せるだけの主体性と創造性が生まれる状態にするためには、「全体最適活動」に対する時間や労力の投資は、自分が責任として負っている部分目標の達成に将来的に寄与するものであるということが腹落ちできるように支援することが重要です。
「全体最適活動」の優先順位が上がらない大きな理由の一つは、シナジー創出に向けた関連部署との調整活動に対する労力がかかりすぎることにあります。「全体最適活動」がいくら将来への投資に繋がるとはいえ、それに対する労力がかかりすぎることにより、自分が責任を負っている部分目標の達成が困難になるように見えた時点で、その活動の優先順位が下げられてしまうことは致し方ありません。特にそれが対立状態にまで発展している場合は、より優先順位は下げられやすくなります。その関連部署との調整負担が軽減されるように、上位階層の側で働きかけることが必要になります。
個人差はあるものの、多くの人にとって仮に現状のやり方が非効率であるとわかっていたとしても、新しいやり方に対する抵抗が生じてしまい、結果的に現状維持姿勢を継続させてしまうことは少なくありません。部分目標の達成のための活動に終始している状態から、全体最適の為の活動へと転換を可能にしていくためには、現状維持姿勢の元になっているマインドセットの変容支援が必要になります。
全体最適活動に対する必要性が理解でき、一時期的にそうした活動が始められたとしても、部分目標の為の活動が優先されるうちに時間の経過とともに、結果的にすべての活動が部分目標のための活動に埋め尽くされてしまいます。
継続的な全体最適活動を可能にするためには、部分目標に全体最適活動のための行動を目標として組み込むことが重要です。
そのためには、1~3までの取り組みを積み重ねた上で、部分目標に組み込むという手順を取るやり方が有効です。1~3までの取り組みを経ないまま、4の活動を推進したとしても、トップダウンによる弊害が生じ、真のシナジー効果は期待できなくなります。
当ソリューションでは、上記の4つの観点を踏まえつつ、組織プロセスコンサルティングとファシリテーションを組み合わせることで真のシナジー効果の創出を可能に致します