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INTERVIEW

組織ビジョン構築・浸透 - デンソー労働組合様

​本当に大切にしたい”ビジョン”を掲げて
​(ロングインタビュー版 01)

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  • 紹介:デンソー労働組合様

1945年に前身となるトヨタ自動車工業刈谷南工場従業員組合が結成。1949年に日本電装としてトヨタ自動車工業から独立し組合は全自動車日本電装分会となる。1955年に日本電装労働組合へ名称変更。1997年全トヨタ労連結成・加盟、及び、自動車総連結成・加盟。1996年に現名称であるデンソー労働組合へと名称変更。 

結成以来、労働者の社会的地位向上、労働諸条件の改善に向けて活動を続けている。 

【話し手】

  • デンソー労働組合 執行委員長  靏川 隆行様

  • デンソー労働組合 鈴木 基弘様

  • デンソー労働組合 藤田 明美様

​【聴き手】

  • オーセンティックワークス 組織プロセスコンサルタント : 鷺

  • オーセンティックワークス 広報:山根

INDEX

1.背景・課題 

2.取り組み概要 

3.その後の変化 

4.これから創り出したいこと 

5.終わりに 

1.背景・課題

 結成から75年以上の歴史を持つデンソー労働組合様。「労働組合のビジョンを創ろう」と靏川さんが中心となって声をあげて始まった本プロジェクト。はじめに、そこに至る過程をお聞きしました。 

―靏川さん 

  私は1993年にデンソーに入社し、カーエアコン部品製造部門に15年間在籍したのち、2009年から8年間、労働組合の執行役員を務めました。2019年に再び組合に、今度は副委員長として着任して今年は委員長2年目になります。 

 副委員長としての2年目を迎えたときに「組合が芯として持っているもの、柱のようなもの、目指す姿」が欲しいという話が持ち上がったのが最初のきっかけでした。 

 私自身も上部団体へ出向を経験するなど、様々な活動をする機会がありました。組合員さんの暮らしと地位向上が我々の活動目標でありますが、労働条件改善交渉や職場問題への対応を続けているうちに、「私たちが本当に大切にすべきものとは何だろう?」と、何を判断軸にして労働組合を前進させていけばよいのか、という迷いを持つようになりました。そのことについて仲間うちで話をしてみると、みなバラバラのことを思っているということが分かったのです。 

  

―鈴木さん 

 私は実務側の立場として、少し違う視点からになりますが。組合に在籍して6年経ち気づいたのが「組合には長い目線がないのか」ということでした。会社側は組織経営として長期の展望を元に様々な施策・取り組みを展開していきますが、組合は労働条件交渉などがあり、単年のサイクルが強い職場で、このままでよいのかと。一方でその環境に慣れている自分もいて、この歯がゆさからどうしたら脱出できるのだろう…と思っていました。 

 すると、ある時から、若い世代から「ビジョンがない」という声が聞こえてくるようになって。それならばと話し合う機会を設けて、思い切って、どろどろとした鬱屈とした部分も含めて本音で話しました。結果的に、みんなが心の底で「ビジョンを創ったほうがいい」という想いを持っていたことがわかったのです。ビジョンづくりが実現したら、自分も、皆も、煤が燻っているようになっている心がぱっと晴れるのでは、という期待がありました。 

 

―靏川さん 

 初回の打ち合わせで「オーセンティックワークスの皆さんとなら何かできるのでは?」と肌感覚で感じられました。1時間くらいの会でしたが、我々の状況についての様々な洞察をお話いただき、また「どんな構造が問題を引き起こしているのか」などの説明を通して、自分の頭が急速に整理される感覚というか、今までの経験が箱の中に収まり、思考が深まるようは体験がありました。自分も、自分たちも変われるのではないかというワクワク感がありましたね。 

 

―鈴木さん 

 私にとっては「混沌としていることに名前が付いて、取扱い可能なものになっていく」時間でしたね。例えば「揺り戻し構造」について解説いただきましたが、これはまさに自分たちの組織のことを指しているなと…。でも、最初のセッションを通して、それもこれから変えていけるんだという可能性も同時に感じられました。 

2.取り組み概要

​(1)プロジェクトの目的・ゴール

初めにビジョン構築プロジェクト実施に当たって、弊社とデンソー労働組合様で、プロジェクトを通して創り出したいゴールとして次の内容を合意、設定しました。


​1.目的
先行きの不透明感が増し、激動する事業環境において、デンソー労働組合としての存在意義の再定義を図り、組合運営の新しい柱となるビジョンを構築する。

2.ゴール

  • 労働組合としての新しい柱となるビジョン・ミッション・バリューのステートメントを作成する  

  • 作成したステートメントの組合員全体への展開を図るための足掛かりを作る 

3.プロジェクトのコンセプト

  • ビジョンやステートメントにまつわる定義の整理を図りつつ、関係者の思いや問題意識を紡ぎながら、ステートメントづくりが図れるようにする  

  • ステートメントづくりの過程から非専従メンバーも巻き込めるようにすることで新しいステートメントへの思い入れが生まれやすくする 

​(2)ビジョン構築フェーズ

デンソー労働組合様ならではの状況や背景を踏まえて、「ビジョンクローバーモデル」の観点を取り入れたビジョン構築プログラムをご提供させていただきました。

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プログラムには「ビジョンクローバーモデル」の観点を取り入れ、ビジョンを「答え」として設定し、そこに至るまでの計画・目標を緻密に設定しこつこつ進めていく山登り型ビジョンから、ビジョンを「問い」として設定し、刻一刻と変化する状況に対して対応できる波乗り型ビジョンへのパラダイム・シフトが実現できるようサポートさせていただきました。 

※ビジョンクローバーモデルとは

ビジョンは、 Will(憧憬型ビジョン)、Cloud Be(シナリオプランニング型ビジョン)、Should(達成・解決型ビジョン)、Can(ロードマップ型ビジョン)の4つのタイプで整理することができます。ビジョンそのものの定義を共有し、その検討プロセスに対して合意を得ながら、内容に対する詳細検討をすることで、ビジョンの質を高めるのと共に、関係者の巻き込みを図りやすくします。 
​※詳細はこちら

図.ビジョン構築の流れ

■補足説明:シナリオプランニングとは 

 「起こりうる未来」の環境・状況を複数のシナリオとして整理・共有化し、戦略を導くための手法です。より詳細には、どっちに転ぶかわからない将来の状況に対して、その時点で出たとこ勝負による「手遅れ」、「打ち手の手詰まり」、「コスト高」に陥らなくて済むように、「どっちに転んでもやっておくべきこと」を見極めてやっておけるようにするための思考実験と変容を促す手法。 

…振り返ってみて、どのような機会・体験でしたか? 

 

―靏川さん 

 これまでにない経験でしたので、とにかく必死で、正直しんどかったですが、その分組合執行部メンバーの成長につながったと思います。セッション中にも、オーセンティックワークスさんからは様々な「問いかけ」がありましたね。その度にかつて自分が大切にしていた価値観が一つひとつ壊されていくような体験でしたし、本当に大切な「本質」は研ぎ澄まされていて、様々な問いに繰り返し向き合い、考え、答える中で見えてくるものなのだと理解しました。 

ビジョンステートメントができて以降の変化ではありますが、メンバーが新たな取り組みを次々提案してくれるようになりました。また、かつての私のままでしたら、自分の価値観にだけ照らし合わせて「ダメだ」と言っていたと思います。新たな可能性そのものを受容し、試すことは、価値創造のために組織のトップの立場に絶対必要な姿勢であると学びましたし、今も日々痛感しています。 

 

…デンソー労働組合様ならではの「ビジョン」を”ステートメント”(宣言文)化するために、何度もディスカッションや検討を重ねました。 

 

―鈴木さん 

 ステートメントづくりの段階で、急に「いい言葉選び」になりかけたときは、難しい局面でしたね。言葉遊びになってしまって意味がないな…と思ったのと共に、なぜこうなったのかを考えてみると、ビジョン、いわば未来の話をする以前に、自分たちが過去やってきたことと、それをどういうものとして捉えているかの言語化と共有が足りないと思って。そのことをオーセンティックワークスさんに相談し、ステートメントづくりの前に少し迂回して、私たちはどんな土台の上に立っているか、そして、一人一人がこの組織をどう捉えて、どう変えていきたいのか。どんな未来を表現したいのかを考えました。 

 今でも靏川さんとよく話しますが、あのプロセスがあったからこそ、私たちの土台となっていることについてメンバー全員と共通理解を持つことができました。以来ずっと私たちの拠り所となっています。 

 

…ありがとうございます。我々にとって印象深かったのは、皆さんがいつでも「私たちは誠実であるのか?」という問いに立ち止まってお話をされていたことでした。 

 

―鈴木さん 

 オーセンティックワークスさんとの機会がなければ生まれなかった問いだと思います。我々は組合員さんを守る立場でありますが、「自立・自律」というステートメントは、もしかすると突き放されたような印象を受けるかもしれないとう懸念もありました。しかし、本当に守るべきことは何なのかをとにかく考えぬいて、言葉の印象を気にするのではなく、本当に必要なことを掲げるというスタンスこそが真の誠実さではないかと考えました。いまでも、私たちの背骨となっていることです。 

 

-靏川さん 

 ステートメントづくりは、既存の価値観を壊していくようなしんどい時期でしたね。改めて、出来ていない事に向き合い、出来ていなかったことを認めたことで、「誠実さ」ということにたどり着きました。この体験がなければ、“置きに行った”ビジョンになっていたと思います。誰からも何も言われないようなビジョンでは、意味がないんですよね。 

 出来上がったビジョンは、合同年次総会という場で、自分の言葉で皆さんにお伝えしました。様々なセッションで自分なりに感じたこと、想いを織り交ぜて、メッセージとして伝えました。ステートメントの発表は、組合としてそのスタンスを取るというまさに宣言でもあり、総会後はかなり色々言われました。しかし、意見をくれたことが、組合役員の皆さんの情熱を感じられて非常に嬉しかったです。 

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