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INTERVIEW

組織ビジョン構築・浸透 - デンソー労働組合様

​本当に大切にしたい”ビジョン”を掲げて
​(ロングインタビュー版 02)

  • 紹介:デンソー労働組合様

1945年に前身となるトヨタ自動車工業刈谷南工場従業員組合が結成。1949年に日本電装としてトヨタ自動車工業から独立し組合は全自動車日本電装分会となる。1955年に日本電装労働組合へ名称変更。1997年全トヨタ労連結成・加盟、及び、自動車総連結成・加盟。1996年に現名称であるデンソー労働組合へと名称変更。 

結成以来、労働者の社会的地位向上、労働諸条件の改善に向けて活動を続けている。 

【話し手】

  • デンソー労働組合 執行委員長  靏川 隆行様

  • デンソー労働組合 鈴木 基弘様

  • デンソー労働組合 藤田 明美様

​【聴き手】

  • オーセンティックワークス 組織プロセスコンサルタント : 鷺

  • オーセンティックワークス 広報:山根

INDEX

1.背景・課題 

2.取り組み概要 

3.その後の変化 

4.これから創り出したいこと 

5.終わりに 

2.取り組み概要

​(2)ビジョン浸透・フェーズでの取り組み内容

■「自立・自律」というビジョンステートメントが出来上がったあとは、ビジョンの浸透・展開フェーズに移ります。「コンサルテーション」は、ご相談したいことについて、ご相談したいタイミングでお声をかけていただき、ディスカッションパートナーとしてご支援させていただくサービスです。また、デンソー労働組合様が現場でリーダーシップを発揮して現場でのビジョンの具現化をサポートしていくための施策として、チーミングに関する講演と、チーミングを可能とするSOUNDカードセッションをご提供させていただきました。

①コンサルテーション 
 

…ビジョン浸透・展開フェーズでは、藤田さんが推進者として取り組まれていました。振り返ってみて、いかがでしょうか。 

 

―藤田さん 

 多数いる組合員さんに対してのビジョン浸透・展開について、どうすればインパクトのある取り組みになるかをご相談させていただきました。これまでの組合のやり方は、現場からの声や上手くいった事例を抽出して、再現性を持った取組みを広く展開していくというものでした。しかし、新たに策定したビジョンが「自律・自立」という抽象的なテーマで、筋違いな取組みをして方向性を違えてしまわないように…と、オーセンティックワークスさんに頼らせていただきました。 

 労使課題を取り扱っていると、会社視点・組合視点でそれぞれ課題としていることを検討するので、考えれば考えるほど、つい組合独自の立場を忘れてしまうということが度々あります。組合のいう「自律・自立」は、企業がいう「自律・自立」と何が違うのか?ということを常に壁打ちセッションで指摘いただいていました。 

 日々会社側ともやり取りしていると、つい目先の効果に視点が寄ってしまいがちです。ゆくゆくは組合員さんのためになる取り組みだとしても、短期目標かの如く話してしまうのは結局会社側が話している内容と変わらないと受け取られてしまうと、常に「組合として」を問い続けてくださったのが有難かったです。 

 私が思う組合の役割は、これらの施策や労使対話が実現した暁に、どれだけ多くの組合員さんが自分の仕事を生き生きと捉えられているかどうかだ、と考えています。働く時間は人生における大部分を占めていますから、どれだけ前向きに自分のためだと思えるかどうか。最寄り駅から会社までは毎朝人の列ができるのですが、10年後、どれだけ多くの人が上を向いて歩いている状況をつくれるかどうかだと考えています。 

―鈴木さん 

 オーセンティックワークスさんとのセッションを通して、我々の組織は引き戻しが起こりやすく構造的に変えづらい組織であるということを理解しました。ビジョン浸透の活動を施策として落とし込んでいく過程で、同じように引き戻し構造が起こるだろうと思いました。加えて、2年に1度人が入れ替わるので、ある種の“伝説”のような残り方では息づかないとも思ったのです。難しい「問い」であればあるほど、向き合って何らかの判断をする局面で無意識に出る思考のクセというのがあると思います。そこから脱するのには独力では難しいと思ったので、引き続きディスカッションパートナー役をお願いしました。「悶絶・葛藤・答えはない」という時間を過ごすこと、答えを導いてもらうのではなく問いに私たちがどう向き合っていくのかが肝要だと感じた時間でした。 

 繰り返しになりますが、賃金交渉という節目があるためか単年度サイクルで物事を考えがちな組織なんです。「賃金交渉に応じてくれた代わりにこれを頑張ります」と言って、また1年活動していく。農作物を育てていくような循環になればいいですが、出来ていないことにも折り合いをつけて進まなければならないときに、判断軸がゆがむ可能性が高い。その判断のダイナミクスが10年後どのようなインパクトを持つのか、どのように発展して育っていくのかを想像しながら、「それも承知でこのジャッジをしている」立場をとれるかどうかだ、と思っています。コンサルテーションでは、組織ぐるみでのトレーニングをさせていただいていますね。 

②SOUNDカード™セッション 
 

■チーミングについて 
心理的安全性を提唱したハーバード大学の組織行動学者であるエイミー・エドモントソン教授によるチームワークに関する概念。詳細はこちら
 

■インテグラルチーミング手法「SOUNDメソッド®」をベースに作られたSOUNDカード™は、コーチングやファシリテーションの専門知識がなくともS・O・U・N・Dの各カードの問いとファシリテーションシートに沿ってミーティングを行うことで、チームのビジョンマネジメントを促進する深い対話が可能となる対話ツールです。ビジョン浸透施策の一環として、約100名の職場役員の皆さんにSOUNDカード™セッションを体験していただきました。 

…SOUNDカード™セッションについてはいかがでしたか。​

―藤田さん 

 職場役員への展開前に、執行部内で体験セッションをしていただきましたが、“カードに言わされる”ように、素直な問いが出てきたのが印象的でした。その時は執行部内の課題をテーマで扱ったのですが、表面的な話に留まらず、違う立場のメンバーであっても、心の底では同じようなことを思っているということと、どんな「ありたい姿」をイメージしているかを確認しあうことができました。この会話があったことで、その後の労使課題についても大きなハレーションなく乗り越えることができたと思います。 

 

―鈴木さん 

 職場役員さんとのSOUNDカード™セッションでは、様々な属性の混成チームを作って、「これからのリーダーとして必要なこと」を考えました。普段合う機会のない人が、どんな想いや価値観を持っているのかに触れ、深い話ができたことに刺激を感じた人が多かったようです。 

 セッション後も、参加者の意識や行動に変化を感じる出来事がいくつもありました。そのうちの一つとして、ある日、「自チームにもチーミングの要素を取り入れて、組織の関係性を良くしていきたい。でも、SOUNDカード™の使い方がわからないので一緒にやってほしい」と、とある担当者に頼まれるということがありました。その担当者はどちらかというと受け身で、タスクがあればこなしていく人と見えていたので、その変化ぶりにものすごく感動を覚えました。 

 または、SOUNDカード™が無くても、SOUNDメソッド®の要素を積極的に取り入れている人が多いですね。私自身、“N(NegativeCheck)”の観点が染みつき始めていると感じます。とても大切なステップですよね。我々の組織構造では、周縁化というか、メンバー間で温度差や盲点が生まれやすいのですが、Nのステップがあるということが共通言語化できていると、お互いに気になっていることを意見として出しやすくなると思います。 

※注:NegativeCheck…SOUNDメソッド®の5つのステップのうちの1つ、「抵抗/摩擦の洗い出し」。新たに見い出した「実践テーマのポイント」にアクセスすることで発生しそうな反対意見や思いつく懸念などを洗い出し、より実現可能で効果の高いネクストアクションにつなげるためのステップ。 

3.その後の変化

…さまざまな施策を実施させていただきましたが、その後の変化として感じられていることはありますか。 

 

―藤田さん 

組織内を巻き込んでいかねばならず、様々な情報をやり取りしながら会社側と会話していく立場は、ときに恐怖を感じることがありますが、この1~2年で組織が確実に変化しているのを実感しています。 

「お互いに見ている景色は違うもの」という前提で話ができたり、組織全体としての視点が持てたり。率先して情報展開して、連携を図るという動きが他の担当者にも広がっているように思います。 

 

―鈴木さん 

 確かに、抽象度の高い話を扱えるようになってきましたね。誰かの活動や行動に対して素早くリアクションもかえってくるので、みんなどんどんオープンになっていく。話していて、今、私も気づきましたが、これがまさに組織内で文脈形成がなされてきているということなんですね。 

 

―靏川さん 

 わたしは、ビジョン構築を通して、自分が大事にしたい価値観が大きく変わったのを感じました。家では、娘にも「お父さん、なんだか感じ変わったよ」と言われましたね。(笑) 

 

―鈴木さん 

 結構大きなトラブルが起こった時も、靏川さんが、「大変なことが起こっているけど気持ちは穏やかなんだ」と言っていたのをよく覚えていますよ。 

 

―靏川さん 

 改めて、チームメンバー全員が成長した経験となりました。お互いを認めあったうえで「組織としてどうするのか」を議論できるようになりましたし、それまでは文句ばかり…という人が「こうすればいいんじゃないか」と前向きな意見を出してくれるようになったりと、多くの変化を感じています。 

4.これから創り出していきたいこと

…ここまでありがとうございました。最後に、皆さんが「これから創り出していきたいこと」についてお聞かせいただけますか。 

 

 

―靏川さん 

 私たちが議論して感じたことで積み上げた価値観を文化として作っていきたいです。まず私たちの組織が実験台となれる、チャレンジングな組織を創るという文化を継承してきたいと思います。 

 オーセンティックワークスさんに伴走していただいたここまでは、ビジョン構築と浸透のフェーズとして、まずは我々自身と近くのメンバーに対して「ビジョンとは身近なものである」ことを伝えるのに注力してきました。今後は組合員の皆さんに息づくものとして広げていくフェーズになります。それが皆さん一人ひとりにとってのビジョンとなり、「拠り所」となって、より活動が活発化することを期待しています。 

 

―鈴木さん 

 我々のこの取り組みをきちんと引き継いでいくことだと考えています。そのことをオーセンティックワークスさんにお聞きしたとき、「思考実験を引き継ぐこと」と言われたのが印象に残っています。自分なりの答えとして、それは「いい葛藤をすること」だと最近は考えるようになりました。問いに向き合い、どんな葛藤があったかのプロセスそのものを未来に残しておけば、次の課題にも向き合っていける組織になると思っています。そのためのインフラ作りも始めています。10年後、15年後に今のメンバーが全員いなくなっても思考実験が引き継がれているように取り組んでいきたいですね。 

 

 

―藤田さん 

 「進化する組織」をつくりたいと思っています。多くの、違う立場の人が集まって、より良いものをつくる。同時に、私自身がなにをどこまでできるのかをずっと考え続けられる人間でいたいなと思います。 

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