U理論とは?

出現する未来からイノベーションを創発する。

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U理論とは、マサチューセッツ工科大学 スローン校 経営学部上級講師であるC・オットー・シャーマー博士によって生み出された、「過去の延長線上ではない変容やイノベーションを個人、ペア(1対1の関係)、チーム、組織、コミュニティ、社会のレベルで起こすための原理と実践の手法を明示した理論」です。

約130名の学者、起業家、ビジネスパーソン、発明家、科学者、教育者、芸術家などからなる革新的なリーダーに対してインタビューを行われ、その知見が原型となって生みだされています。

その後もシャーマー博士自身や世界中の実践者たちにより、数々の社会変革や組織変革のプロジェクト等で活用され、実践理論としての体系化が図られ続けています。企業での実践事例のみならず、南アフリカのアパルトヘイト問題やコロンビアの内戦、アルゼンチンやグアテマラの再建など、複雑な社会問題を解決する現場でも活用され、多大なる影響を生み出しています。

なぜ、今、U理論なのか?

U理論が生まれてきた背景と着目されている理由には、ある共通点が存在しています。

それは21世紀に入り、解決が困難を極める問題が世界中でミクロレベルでもマクロレベルでも増え続けているということです。

シャーマー博士はそうした問題の背景には、3つの複雑性(表1:3つの複雑性)が存在していると指摘しています。

個々の複雑性はそれだけでも、難しい問題を生み出しえますが、他の複雑性も同時に誘発している状態、特に3つの複雑性の全てが関係している度合いが高まれば高まるほど解決は困難を極めます。

世界各地に存在する社会問題のほとんどは、これらの複雑性のいずれか、もしくはいずれにも当てはまっています。

また、それだけでなく、とどまることなく変化し続けるビジネス界においても、同様の複雑性は極まり続けています。

特に日本においては、人口減少社会に突入したことで、出現する複雑性に直面し、個人や企業の経済活動そのものに多大なる影響を与え始めています。

こうした複雑性の高い社会においては、これまでのやり方では通用しないという漠然とした感覚は多くの人の中に強く生じるため、イノベーションを求める声は高まりやすくなります。

しかしながら、イノベーションとはどのように生じうるのか、何がイノベーションを可能にするのかについては属人的で不透明な状態が続いていました。

その時代が求めるニーズによって生まれ、イノベーションのプロセスを解き明かしたのがU理論です。

表1:3つの複雑性

U理論の特徴とは?

U理論には主に以下のような特徴があります。

  1. 外的な状況に対する本質的な変化をもたらすためレバレッジポイントを内面の変容に置いている

    通常、問題の解決や状況の改善を図る上で、行動を変えようとしたり、仕組みや制度の変更によって解決を図ろうとしたりします。しかしながら、そうした施策は問題の先送りに留まることになったり、表面上の行動は変わったように見えても、主体性は生まれず、より責任の所在が不明確になったりして、本質的な解決に至らない事態に終わることは少なくありません。

    U理論においては外的な状況に影響を与える施策や行動は、個々人の内面から生じているものであるという観点に立脚し、内面の変容に基づくイノベーションの実現を重視しています。
     

  2. 内面の変容を外的な変化へと繋げていくための道筋とその実践手法が体系化されている

    カウンセリング、コーチング、チームビルディング等、個人や集団における内面の変容を促進する手法は数多く存在しています。しかし、その変容を外的な状況を変えていくための施策や構造の創出につなげていくための具体的な指針は乏しいままになっていました。

    また、内的な変容のための各種手法を状況に合わせて組み合わせたり、応用を利かせたりするための指針や共通言語となる理論は少なく、一般化されているとは言い難い状況が続いていました。

    U理論は目に見えづらい内面の変容はどのように促進され、それをどのように外的な施策へと繋げていけばよいのかの原理・原則が描かれています。
     

  3. 内面の状態に対するメタ認知を図りやすくなり、その都度、自ら変化を働きかけることができる

    内面の状態は刻一刻と変化し、人はその都度、自覚を伴っているか、いないかに関わらず、何かしらの働きかけを外的な状況に対して行っています。

    その瞬間、瞬間の内面の状態の質を高めていくことで、外的な状況に対するインパクトを肯定的なものに変えていくことができます。その内面の質の向上をあらゆる場面において可能にするために、U理論ではその内面の状態を4つのレベルに区分しています。

    4つのレベルに照らして、今の自分の内面の状態をメタ認知(自分の認知状態自体を認知する)できるようになることで、自分に今、求められている意識変容が何かを理解しやすくなります。

    また、U理論の中では次のレベルに移行するためのポイントも明示されているため、訓練次第によっては、実際の変容を自ら起こせるようにもなります。
     

  4. 自分が当事者となっている問題の解決の糸口となる

    問題が生じていることは明白で、その解決が図られなければ、致命傷に至るとわかっていても、有効な打ち手が打てていない、状況の悪化が止められないといった状況が継続している場合、その問題意識を抱いている当人自体がその問題の当事者になっている、すなわち、問題の原因の一部を担っているケースが多々あります。

    人は誰しも自分のことを他人が見ているようには見ることができないために、自分自身がどのように問題の一因となっているのかに気づけないまま、問題解決に挑もうとしてさらに問題を加速させるということが起こりえます。

    U理論はそうした自分自身が当事者となっている問題というものが存在していることを示唆し、その解決のための糸口を示しています。
     

  5. 個人、1対1、チーム、組織、社会のあらゆるレベルに対する実践が可能

    U理論は問題症状が個人、1対1、チーム、組織、社会のどのレベルによるものであったとしても、応用が可能なものになっています。レベルに応じて、具体的な実践手法は変わってくるものの、原理原則は普遍的なものであるため、解決に向けたヒントを得ることができます。

U理論の効果・効能とは?

U理論は個人や集団・組織の学習を促進し、イノベーションを可能にするための原理・原則を示した理論であることから、応用の範囲は多岐に渡り、その効果・効能も様々なものになります。

ここでは領域別に主な効果・効能をご紹介いたします。より詳細はこちらからご覧いただけます。(図2:U理論実践による主な効果・効能)

表2:U理論実践による主な効果・効能

U理論の核となる概念とは?

U理論は主に以下の二つの異なるディメンション(側面)から構成されており、それが一つのモデル図の中で表現されています。(図1:U理論の4つのレベルと7つのステップ)

  1. ソーシャル・フィールドの4レベル
    その瞬間、瞬間の内面の状態のレベルを表し、意識の領域構造、もしくはソーシャル・フィールド(以下、ソーシャル・フィールドに統一)と呼ばれています。
    4つのレベルに区分されていますが、個人であれ、集団であれ、このレベルが低い状態に留まった状態が継続していると、イノベーションは生まれないばかりか、時間の経過とともに問題症状が立ち現れ始めます。レベル3「センシング」、レベル4「プレゼンシング」に至れる状態を創りやすくすることにより、新たな展開を迎え入れやすくなります。
     

  2. Uプロセスの7つのステップ
    ソーシャル・フィールドがその瞬間、瞬間の内的な状態を示すものなのに対し、時間軸に従って、どのようにイノベーションの実現可能性を高められるかをプロセスとして明示しているのが、7つのステップです。書籍の中ではより詳細に12のステップとしても解説がされています。
    7つのステップは、Uのカーブでモデル図として描かれており、左側のUを下り、底にたどり着くまでの最初の4つのステップが意識変容、右側のUを上がる3つのプロセスが行動変容として描かれています。意識変容の4つのプロセスは、ソーシャル・フィールドの4レベルと対応しており、同じ意味を成しています。プロセスとしては右側は行動変容に位置付けられていますが、実際にはその瞬間にも内面の状態があるため、その都度、ソーシャル・フィールドの4レベルがどこにあるのかが、そのステップの質を決めることになります。

図1:U理論の4つのレベルと7つのステップ

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Uプロセスの7つのステップとは?

ここではUプロセスの7ステップを解説し、その中でソーシャル・フィールドの4レベルも合わせてご紹介いたします。

ステップ1 ダウンローディング

「過去の経験によって培われた枠組み」の内側で、自分の思考や意見などが再現され、その思考や意見に意識の焦点が当たっている。すなわち、それに意識が奪われている状態を指しています。この状態が継続すると、あたり障りのない態度は繰り広げられるものの、自分の枠組みに合わないものは自動的に排除してしまっていたり、反応的な態度を取ってしまったりする状態になるため、場のエネルギーが停滞し、やがて崩壊を迎えることになります。

ソーシャル・フィールドにおいてはレベル1にあたります。

ステップ2 観る(Seeing)

頭の中で起きている雑念に意識を奪われず、目の前の事象、状況、情報に意識の矛先が向けられている状態を指します。

目の前のことに釘付けになっており、その事象と自分の既存の認識との差分を照らし合わせながら、状況に関わります。話し合いの場面においては、集中状態になっていることから、議論や討論の状態になりやすく、お互いの論理と論理がぶつかり合う展開となります。

お互いの認識や利害関係のズレが生じやすい、複雑性の高い状況においては、この状態では問題の解決に至れないため、時間の経過とともにレベル1に戻りやすくなります。

ソーシャル・フィールドにおいてはレベル2にあたります。

ステップ3 感じ取る(Sensing)

過去の経験によって培われた枠組みが崩壊し、枠組みを超えた側(他者など)から今の自分や状況が見えている状態を指します。

これまでの自分の認知に影響を与えていた枠組みが転換する状態になることから、まったく新しい感覚で状況を捉えることができるようになり、奥行きを持って感じられるようになる。

話し合いの場面や対人関係においては、対峙している相手の目玉から世界を見ているかのように感じられるため、共感性が高まり、内省的な対話への移行が生じます。平行線を辿っていた議論や堂々巡りの状態に陥っていた状態からの転換が生まれ始めます。

ソーシャル・フィールドにおいてはレベル3にあたります。

ステップ4 プレゼンシング

自身の最も深い源につながる能力によって、部分的な関心からではなく、全体性から未来が出現しイノベーションが生まれるようになります。「ダウンローディング」「観る(Seeing)」「感じ取る(Sensing)」までが個人の内側の体験にとどまるのに対して、プレゼンシングは個人という枠を超えて、まるで共振するかのように他の人に響くものがあります。

ソーシャル・フィールドにおいてはレベル4にあたります。

プレゼンシングの状態に至った際には以下のような様々な現象が生じえます。
 

  • 画期的なアイデアやインスピレーションが湧いてくる

  • パーソナルビジョンが見え、確信が高まる

  • リーダーとして覚醒する。リーダーとしてのあり方が拡大する

  • にっちもさっちもいかない袋小路の状態であったとしても、心は穏やかで、かつ活力に溢れた行動ができるようになる

  • 自己受容感が高まり、ありのままの自分としての行動が促進される

  • 過去の延長線上とは異なる行動パターンが出現する

  • チームや組織としての一体感が高まる

  • チームや組織の次なる一手として画期的なアイデアや共感的な合意形成が生まれる

  • チームや組織の共創ビジョンが生まれる
     

ステップ5 結晶化(Crystallizing)

プレゼンシングの状態から迎え入れられた、未来の最高の可能性からビジョンと意図を結晶化していきます。

プレゼンシングの状態で出現しつつある未来は、かすかな感覚であるために、この結晶化のステップにおいては、イメージを活用することでそれを目に見えるものとして表していきます。

この時点ではまだ、漠然としたイメージに過ぎませんが、そこからその意味付けを図っていくことで、出現する未来から学ぶことを可能にしていきます。

ステップ6 プロトタイピング(Prototyping)

結晶化のステップで得られたイメージを具体的な施策として形作っていきます。素早く形を創り、周囲からのフィードバックを得ることで、プロトタイピングを何度も繰り返していきます。

ステップ7 実践(Performing)

プロトタイピングのステップで形作られた施策の精度が高まった時点で、世の中に広め、構造の一部として組み込まれるように働きかけていきます。構造の一部として組み込まれていくことで、変革の推進が図られるようにします。

U理論ムービーギャラリー

  • 222名によるラージスケールダイアログ~U理論入門出版記念シンポジウム~

200人を超える人数で、Uプロセスを辿ると何が可能になりうるのか?多人数でUプロセスを辿ることはできるのか?その迫力と可能性を感じ取っていただけます。

  • 東日本大震災復興支援プロジェクト~クロスボーダーリーダーシップサミット2011~

解決の難しい社会的な問題に対して、多様なステークホルダーが一堂に会し、どんな場を作り出すことができるのか?東日本大震災における復旧のフェーズから復興のフェーズに移行し始めたタイミングでのリーダー達の新しい挑戦の記録。